アトピー性皮膚炎
小児のアトピー性皮膚炎は成長とともによくなっていくことが多いと言われていますが、小児期のアトビー性皮膚炎が治癒せず、成人型に移行した場合や成人発症の場合は、慢性に経過しやすい傾向があると考えられています。
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、皮膚のバリア機能を補う治療(保湿)と、炎症を抑える治療(抗炎症療法)です。患者さんの症状の程度やライフスタイルなどに応じて適切な治療をご提案いたします。
当院ではアトピー性皮膚炎に対して下記の治療を行っております。お気軽にご相談ください。
内服治療
内服治療の目的は、アトピー性皮膚炎の症状であるかゆみの改善と症状の悪化を防止することにあります。
抗ヒスタミン薬
最初は、花粉症や一般的なじんましんなどに使われる比較的穏やかな作用で安全性も高い抗ヒスタミン剤のお薬を処方していきます。
経口ステロイド薬
抗ヒスタミン薬だけでは改善が難しいと判断される場合、患者さんの症状が重症の場合、急速に悪化傾向に入った場合には、ステロイド系の内服薬の処方を検討していきます。
ステロイド系のお薬は、これまでの治療で十分な効果が得られず、強い炎症を伴う湿疹が広範囲に生じている16歳以上の患者さんが対象となります。
免疫反応を抑える効果や、副作用が強いため、3か月程度までは投与を続けることができますが、それ以上になると、できれば2週間以上の休薬をする必要があります。
服用中は、血圧の上昇や、血糖値の上昇などが副作用として現れる場合があり、医師の指示通りに内服をしていただくことが大切です。
塗り薬による治療
塗り薬には、非ステロイド系外用薬、ステロイド系外用薬、タクロリムス外用薬があり、いずれも過剰な免疫反応を抑える効果があります。
非ステロイド系外用薬
非ステロイド系外用薬は、抗炎症作用が比較的弱く、穏やかな作用と想像していただくと良いと思います。
一方で、接触性皮膚炎という皮膚疾患をまれに起こすことがあるため、実際には適応範囲は狭くなります。
ステロイド系外用薬
最も使用されているステロイド系外用薬は、抗炎症作用が強いお薬です。
様々な種類のお薬があるため、症状の程度や使用部位に合わせて使い分けができます。
ステロイドホルモン作用による副作用として、ニキビが出来やすい、毛細血管の拡張、皮膚がうすくなるなどがありますが、内服薬のステロイド系薬剤と比べると、直接皮膚に塗るため、全身的に問題となるような副作用は少なく、安全性が高いお薬となります。
また、こうした副作用は一時的に現れるものが多く、塗布の中止に伴って改善していきます。
自己判断での使用は、思わぬ副作用、効果が弱くなる、かえって症状が悪化するなどがありますので、医師の指示通りに使用しましょう。
タクロリムス外用薬
免疫抑制薬の外用薬で、ステロイド系のお薬ではないため、ホルモン作用による副作用はみられません。
そのため、特にステロイド外用薬による副作用が出やすい皮膚の薄い顔や首などにも使用しやすいお薬です。
塗り始めの数日間、ヒリヒリとほてりを感じることがあります。
生物学的製剤(デュピクセント®):注射薬
生物学的製剤であるデュピクセント®は、患者さんの皮下に注射をする新しいタイプのお薬です。
特に難治性のアトピー性皮膚炎の方で、既存のアトピー性皮膚炎の治療方法では症状のコントロールが難しい方へ効果が期待できるお薬です。
デュピクセント®の作用機序
デュピクセント®は、「IL-4」と「IL-13」という物質の働きを直接抑えることで、皮膚の2型炎症反応(TH2細胞による炎症)を抑制する新しいタイプのお薬です。
アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や皮疹などの皮膚症状を改善します。
投与できる方
今までの治療法で十分な効果が得られない15歳以上のアトピー性皮膚炎の方にお使いいただけます。
ただし、皮膚病変の範囲、重症度など、使用できる条件がありますので、まずはご相談ください。
自己注射も可能
医師の判断の下、患者さんご自身が注射を行う「自己注射」も可能です。
自己注射は通院に伴う時間的な制約や負担が軽減でき、ご自身のライフスタイルに合わせて治療することができます。
通院日が調整できるため、仕事や旅行などの活動範囲も広がります。
自己注射を開始する前に、当院にて指導を行い練習していただきますので、自己注射が初めての方もご安心ください。
副作用
副作用としては注射部位反応により、注射した部分が赤くなったり、かゆみや痛みが出る場合があります。
また、アナフィラキシーショックや喘息など、他のアレルギー性疾患の症状が変化する可能性があるため、当院では薬の投与後、一定時間院内にて安静にしていただき、副作用などのリスクに対応した診療を行っております。