生物学的製剤

リウマチの生物学的製剤

生物学的製剤とは

生物学的製剤は、体内の炎症の原因となる特定の物質(TNF-α、IL-6 など)をピンポイントで抑える薬です。従来の抗リウマチ薬とは作用機序が異なり、強い炎症を効果的にコントロールできることが特徴です。

現在は複数の薬剤があり、点滴で投与する薬剤と、自己注射で使用できる薬剤があります。患者さんの病状や生活スタイルに合わせて選択することが可能です。

 

一般的には、次のような場合に使用が検討されます。

抗リウマチ薬(メトトレキサートなど)だけでは十分な効果が得られない

関節炎の進行が早い

痛みや腫れが強い

早期から積極的に炎症を抑える必要がある

 

生物学的製剤は高い治療効果が期待できる一方で、免疫の働きを抑えるため感染症などの副作用に注意が必要です。そのため、治療開始前の検査や治療中の定期的な検査を行いながら、安全に使用していきます。

当院では患者さん一人ひとりの病状や生活背景を考慮し、薬剤の種類や投与方法を調整しながら治療を行っています。

生物学的製剤一覧

現在、日本で関節リウマチに使用できる生物学的製剤は12種類あります。

 

商品名 一般名 標的 投与方法 投与間隔 MTX併用
レミケード インフリキシマブ TNFα ①点滴 ①初回・2週後・6週後に投与 4~8週間間隔 必須
インフリキシマブBS インフリキシマブバイオシミラー TNFα ①点滴 ①初回・2週後・6週後に投与 4~8週間間隔 必須
エンブレル エタネルセプト TNFα/β ①皮下注射(自己注射可) ①週1~2回 必須ではない
エタネルセプトBS エタネルセプトバイオシミラー TNFα/β ①皮下注射(自己注射可) ①週1~2回 必須ではない
ヒュミラ  アダリムマブ TNFα ①皮下注射(自己注射可) ①2週間間隔 必須ではない
アダリムマブBS アダリムマブバイオシミラー TNFα ①皮下注射(自己注射可) ①2週間間隔 必須ではない
シンポニー ゴリムマブ TNFα ①皮下注射(自己注射可) ①4週間間隔 必須ではない
シムジア セルトリズマブ ペゴル TNFα ①皮下注射(自己注射可) ①初回・2週後・4週後に投与 2〜4週間間隔 必須ではない
ナノゾラ オゾラリズマブ TNFα ①皮下注射(自己注射可) ①4週間間隔 必須ではない
アクテムラ トシリズマブ IL-6

①点滴

②皮下注射(自己注射可)

①4週間間隔

②1~2週間間隔

必須ではない
ケブザラ サリルマブ IL-6 ①皮下注射(自己注射可) ①2週間間隔 必須ではない
オレンシア アバタセプト T細胞

①点滴

②皮下注射(自己注射可)

①初回・2週・4週後に投与 4週間間隔

②週1回

必須ではない

バイオシミラーとは

生物学的製剤には、ジェネリック医薬品に近い位置づけの薬剤として「バイオシミラー(バイオ後続品)」があります。バイオシミラーは、国の厳しい審査を経て承認された薬剤であり、先行製剤と同等の効果と安全性が確認されています。先行製剤と同様の治療効果が期待できる一方で、薬剤価格が比較的安く設定されているため、治療にかかる費用負担を軽減できるというメリットがあります。

現在、関節リウマチのバイオシミラーとして「インフリキシマブBS」「エタネルセプトBS」「アダリムマブBS」があります。

投与方法・投与間隔について

生物学的製剤には、点滴、皮下注射(医療機関での注射)、自己注射など、さまざまな投与方法があります。

点滴や医療機関での注射の場合は、投与のたびに通院が必要になります。

自己注射の場合は、医療スタッフによるトレーニングを受けたうえで、ご自宅でご自身で注射を行うことができます。

また、薬剤によって投与間隔も異なり、1週間ごと・2週間ごと・4週間ごとなどさまざまです。自己注射が可能な薬剤では、通院回数を減らすことができ、仕事や生活との両立がしやすくなるというメリットもあります。

患者さんの病状や生活スタイル、年齢などを考慮しながら、一人ひとりに合った薬剤や投与方法を選択することが大切です。

副作用について

生物学的製剤は免疫の働きを調整する薬のため、感染症にかかりやすくなることがあります。

特に、肺炎・結核・帯状疱疹などの感染症には注意が必要です。

また、注射部位の反応(赤み・腫れ・かゆみ)や、まれにアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こることがあります。

安全に治療を続けるために、定期的な診察や血液検査などを行い、副作用が起きていないか確認しながら治療を進めます。気になる症状がある場合は、早めに医師へご相談ください。

生物学的製剤に関するよくある質問

Q.どんな時に生物学的製剤を使用しますか?

A.通常は、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬で治療しても、3〜6か月以内に寛解(症状がほとんどない状態)またはそれに近い状態にならない場合に、生物学的製剤の追加を検討します。

特にTNF阻害薬はメトトレキサートとの併用で高い効果が期待できることが知られています。

生物学的製剤は、症状が悪化してから使用する薬ではなく、炎症が続いている場合には関節破壊が進行する前の早い段階で導入することが望ましい治療薬と考えられています。

 

Q.どのような副作用がありますか?

A.生物学的製剤は免疫の働きを抑える薬のため、感染症(肺炎・結核・帯状疱疹など)にかかりやすくなる可能性があります。また、注射部位の反応(赤み・腫れ・かゆみ)や、アレルギー反応(アナフィラキシー)などが起こることがあります。

安全に治療を続けるために、定期的な診察や血液検査などを行いながら副作用の有無を確認していきます。

 

Q.生物学的製剤を途中でやめることはできますか?

A.生物学的製剤を中止すると、関節リウマチの症状が再び悪化する可能性があります。

また、生物学的製剤の種類によっても状況は異なりますが、寛解状態が続いた後に減薬を検討する場合があります。中止を検討する場合は、一定期間寛解状態が維持されていることが望ましいとされています。

減量や中止については、主治医とよく相談しながら判断することが大切です。

 

Q.生物学的製剤とJAK阻害薬の違いはなんですか?

A.どちらも関節リウマチの炎症を抑える治療薬ですが、作用の仕組みや投与方法が異なります。

  • 生物学的製剤
    ・注射または点滴で投与
    ・TNF-αやIL-6など炎症に関わる物質をピンポイントで抑える
  • JAK阻害薬
    ・飲み薬
    ・細胞内のシグナル伝達を抑えて炎症を抑える
    当院では患者さんの症状や生活スタイル、ご希望を踏まえて最適な治療方法をご提案します。

 

Q.治療費が不安です。生物学的製剤は高額ですか?

A.生物学的製剤の費用は、薬の種類・投与方法・治療スケジュール・自己負担割合などによって異なります。

一般的には、3割負担の場合で月3〜4万円程度になることが多いとされています。

なお、生物学的製剤のバイオシミラー(バイオ後続品)は、先行製剤と比べて数千円〜1万円以上安くなるケースが多いです。

※医療費の自己負担を軽減する高額療養費制度が利用できる場合もあります。詳しくは加入されている健康保険組合や、お住まいの市区町村、医療機関の相談窓口などにご相談ください。

 

Q.生物学的製剤は妊娠中や授乳中に使用できますか?

A.生物学的製剤を妊娠中も継続するかどうかは、患者さんの病状や使用している薬剤によって異なるため、主治医と十分に相談して判断する必要があります。

メトトレキサートは胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中は使用できません。胎盤や胎児への薬剤移行が少ない薬剤を使用する場合もあります。いずれにしても、妊娠を希望される場合は、治療薬の選択にも関わるため、あらかじめ主治医に相談しておくことが重要です。そして妊娠中・妊娠希望の方は基本的には薬剤を中止する方法を第一に検討しましょう。

インフリキシマブ(レミケード®、インフリキシマブBS)

TNF阻害薬

関節の炎症を引き起こす物質「TNF(腫瘍壊死因子)」の働きを抑えることで、炎症や関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

 

点滴製剤(TNF阻害薬の中では唯一)

レミケードは点滴で投与する生物学的製剤です。

TNF阻害薬の中では唯一の点滴製剤で、医療機関で投与を行います。

 

歴史のある薬剤

レミケードは、関節リウマチに対して最初に使用された生物学的製剤の一つで、長年の使用実績があります。

多くの臨床データが蓄積されており、現在でも広く使用されています。

 

メトトレキサート(MTX)併用必須

レミケードは、メトトレキサート(MTX)と併用して使用することが基本です。

レミケードは一部にマウス由来の成分を含む抗体であるため、体が異物と認識して薬に対する抗体が作られることがあります。

この抗体ができると、

  • 薬の効果が弱くなる
  • アレルギー反応が起こりやすくなる

可能性があります。

メトトレキサートを併用することで、こうした抗体の産生を抑え、治療効果を安定させることが期待できます。

 

増量・投与間隔短縮が可能

効果が十分でない場合には、

  • 投与量の増量(3〜10mg/kg)
  • 投与間隔の短縮(通常8週間 → 6週間など)

を行うことで、効果が改善することがあります。

患者さんの状態に合わせて、調整していきます。

 

バイオシミラー(後発品)がある

エタネルセプト(エンブレル®、エタネルセプトBS)

TNF阻害薬

関節の炎症を引き起こす物質「TNF(腫瘍壊死因子)」の働きを抑えることで、炎症や関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

 

週1回または週2回の皮下注射(自己注射が可能)

皮下注射で投与する薬で、ご自宅で自己注射を行うことができます。

エンブレルは比較的半減期が短い薬剤のため、中止した場合は比較的早く体内から薬の作用が弱まるという特徴があります。そのため、安全性に配慮が必要な高齢の患者さんなどで使用されることがあります。

 

メトトレキサートと併用しても、しなくても使用できる

メトトレキサートとの併用は必須ではありません。

ただし、メトトレキサートと併用した方がより高い効果が得られるとされています。

 

妊娠を希望している方でも比較的使用しやすい薬

エンブレルは胎盤を通過しにくい薬とされており、妊娠を希望されている方でも比較的使用が検討しやすい薬剤です。

ただし、妊娠中の治療については慎重な判断が必要となるため、妊娠を希望される場合や妊娠が判明した場合には、必ず主治医と相談のうえ治療方針を決めます。

 

バイオシミラー(後発品)がある

ゴリムマブ(シンポニー®)

TNF阻害薬

関節の炎症を引き起こす物質「TNF(腫瘍壊死因子)」の働きを抑えることで、炎症や関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

 

4週間に1回の皮下注射(自己注射が可能)

4週に1回の投与で効果が持続します。

TNF阻害薬の中でも投与回数が少ない薬剤の一つで、通院や自己注射の負担を軽減できます。

 

メトトレキサートと併用しても、しなくても使用できる

メトトレキサートとの併用は必須ではありません。

ただし、メトトレキサートと併用した方がより高い効果が得られるとされています。

 

必要に応じて投与量を増量できる

通常は1回50mgを4週ごとに投与します。

効果が不十分な場合やMTXを使用できない場合には、100mgへ増量することも可能です。

セルトリズマブ・ペゴル(シムジア®)

TNF阻害薬

関節の炎症を引き起こす物質「TNF(腫瘍壊死因子)」の働きを抑えることで、炎症や関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

 

皮下注射(自己注射が可能)

皮下注射で投与する薬剤です。

通常は2週間ごとに投与しますが、病状に応じて4週間ごとの投与を行うこともできます。

 

メトトレキサートと併用しても、しなくても使用できる

メトトレキサートとの併用は必須ではありません。

ただし、メトトレキサートと併用した方がより高い効果が得られるとされています。

 

妊娠を希望している方にも使用が検討される薬剤

シムジアは胎盤通過性が低いことが知られており、妊娠を希望している患者さんでも使用が検討されることがあります。

ただし、妊娠中・妊娠希望の場合は、薬剤の継続や中止について医師と相談しながら慎重に判断することが大切です。

オゾラリズマブ(ナノゾラ®)

TNF阻害薬

関節の炎症を引き起こす物質「TNF(腫瘍壊死因子)」の働きを抑えることで、炎症や関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

 

4週間に1回の皮下注射(自己注射が可能)

通常は4週に1回の皮下注射で投与します。

TNF阻害薬の中でも投与回数が少ない薬剤の一つで、治療の負担を軽減できます。

 

メトトレキサートと併用しても、しなくても使用できる

メトトレキサートとの併用は必須ではありません。

ただし、メトトレキサートと併用した方がより高い効果が得られるとされています。

 

小型の抗体構造をもつ薬剤

ナノゾラは通常の抗体よりも小さな抗体構造(ナノボディ)で作られた薬剤です。

そのため、炎症が起きている関節組織へ届きやすいことが期待されています。

トシリズマブ(アクテムラ®)

IL-6受容体阻害薬

炎症に関わるサイトカインであるIL-6(インターロイキン6)の働きを抑えることで、関節の炎症を改善し、関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

TNF阻害薬で十分な効果が得られない場合にも効果が期待できます。

 

点滴または皮下注射(自己注射が可能)が選択可能

点滴製剤は4週間に1回の点滴で投与します。

皮下注製剤は通常2週間に1回投与します。

効果が不十分な場合には、1週間ごとの投与へ変更することも可能です。

 

単独療法(アクテムラのみ)でも高い有効性

アクテムラはメトトレキサートを併用しない単独療法でも高い有効性が示されている薬剤です。

 

継続率が高い薬

アクテムラは抗薬物抗体ができにくいことが知られており、生物学的製剤の中でも継続率が高い薬剤の一つとされています。

 

日本で作られた唯一の生物学的製剤

サリルマブ(ケブザラ®)

IL-6受容体阻害薬

炎症に関わるサイトカインであるIL-6(インターロイキン6)の働きを抑えることで、関節の炎症を改善し、関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

TNF阻害薬で十分な効果が得られない場合にも効果が期待できます。

 

2週間に1回の皮下注射(自己注射可能)

通常は2週間に1回の皮下注射で投与します。

自己注射が可能なため、通院回数を抑えながら治療を継続できます。

 

単独療法(ケブザラのみ)でも高い有効性

ケブザラは単独療法(ケブザラのみ)でも有効性が示されている薬剤です。

アバタセプト(オレンシア®)

T細胞活性化抑制薬

免疫システムで中心的な役割を果たすT細胞の活性化を抑えることで、TNFαやIL-6など炎症の原因となるサイトカインが過剰に作られるのを防ぎ、関節の炎症や関節破壊の進行を抑える生物学的製剤です。

TNF阻害薬やIL-6受容体阻害薬で十分な効果が得られない場合にも効果が期待できます。

 

点滴、皮下注射、自己注射が選択可能

  • 点滴:初回、2週後、4週後に点滴を行い、その後は4週間ごとに点滴します。投与量は体重に応じて決定されます。
  • 皮下注射:1通常は1週間に1回、125mgを皮下注射します。自己注射も可能です。

 

単独療法(オレンシアのみ)でも高い有効性

オレンシアはメトトレキサートを併用しない単独療法でも有効性が示されている薬剤です。

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