風邪・感冒
風邪・感冒(common cold)について
「風邪」、「感冒」は、通常危険なものではなく、自然に治癒します。しかし、咳、喉の痛み、鼻水といった風邪の症状に悩まされることが多く、また、症状が強い場合には寝込んでしまうこともあります。
風邪は、通常1週間ほどで自然に治りますが、後遺症として続く症状もあります。喉の痛みや鼻づまりは数日後には消失しますが、咳が完全に消失するまでには3週間ほどかかることもあります。
通常、薬による治療は必要ありません。症状を和らげるために役に立つ、対症療法はいくつかあります。また風邪は、通常はウイルスによって引き起こされるものを指しますので、風邪を治療するために抗菌薬を使用することには本来は意味がありません。(抗菌薬は細菌に対して作用するものです。)
風邪の症状
風邪では、上気道の感染によって引き起こされる様々な症状が認められます。発症してから、症状が完成するまで数日程度かかりますが、典型的な症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳嗽、咽頭痛などがあります。発熱、全身倦怠感、頭痛、関節痛を伴うこともあります。
インフルエンザとの違い
風邪は、インフルエンザと紛らわしい場合があります。
しかし、インフルエンザ感染症は、通常の風邪とは異なりインフルエンザウイルスによって引き起こされるため、通常風邪よりも症状が激しく、重症化します。また、インフルエンザは徐々には発症せず、通常は突然の高熱、悪寒、筋肉痛、関節といった症状で急激に発症します。
風邪の診断
風邪と診断できる、特異的な検査や、決定的な症状というものはありません。
通常、典型的な症状と経過から風邪と診断しますが、重要なのは、風邪と診断した場合にはその後どのような推移となるのか、しっかりと経過観察すること、もし改善しなければ、他の疾患を考え適切な対処をすること、が重要であり、われわれ医師としては患者さんに対して、風邪として経過をみる方針とすること、他にどのような風邪以外の感染症や疾患の可能性があるのか、どのような場合には再度受診していただくのがよいか、といったことを、わかりやすく説明し、理解しておいていただく必要があります。
ガイドラインより
日本呼吸器学会の診療ガイドラインにも、風邪の診断についての記載はありませんが、基本的な考えとして「通常、成人は1年間に3~4回風邪に罹患するが、そのほとんどが各種ウイルスによる急性上気道炎であり、軽症であれば罹患者の大部分が自宅療養で自然治癒する」と書かれています。
風邪の治療・予後
風邪に対する、特異的な治療はありません。鼻水、のどの痛み、咳、熱といった症状で、つらいものをやわらげる対症療法を行います。結果的に、風邪であれば、自然に回復します。
逆にいいますと、自然に回復しない場合には、風邪ではない可能性が高く、他の疾患の可能性を考える必要がでてきます。
抗菌薬(=抗生剤、抗生物質)は使用すべき?
先に述べたように、ウイルス性上気道炎に抗菌薬は無効です。
ただし、日本呼吸器学会の診療ガイドラインでは、「明確な細菌感染を疑わせる症状、所見をみた場合には抗菌薬を用いる」と記載されています。
この、明確な細菌感染を疑わせる症状・所見は、ガイドラインでは
①3日以上の高熱の持続
②膿性の(緑色、黄色のねばねばした)喀痰・鼻汁
③扁桃腫大と膿栓・白苔付着
④中耳炎・副鼻腔炎の合併
⑤強い炎症反応:白血球増多・CRP陽性・赤沈値の亢進
⑥ハイリスクの患者
とされています。
風邪の予防は?
同ガイドラインで、風邪の予防にはうがい、手洗いの励行と記載されています。うがいの方法については、ガイドラインでは「水道水、塩水でのうがいには殺ウイルス作用は認められないため、ポビドンヨードを推奨」と記載されています。一方で、「ポビドンヨードではなく、水道水の方が予防効果が高い」と報告している論文もあります。
現在のところ、最も有効な予防法は、帰宅時など石けんでよく手を洗うこと、です。うがいも、水道水だけでもポビドンヨードを用いても、いずれの方法でも構いませんので、行うことができればよりよいでしょう。