子どもの嘔吐・下痢(急性胃腸炎)
子どもの嘔吐・下痢の主な原因
子どもの嘔吐や下痢で多い原因はノロウイルスやロタウイルスです。
とくにロタウイルスは5歳までにほぼすべての子どもが1回はかかるといわれており、また5歳までの子どもで入院が必要な急性胃腸炎の半数がロタウイルスによるものと報告されています。
どちらも簡単に感染しやすく流行しやすいという意味では厄介なウイルスですが、治療方法や対処方法に差はなく、ウイルスを明らかにする検査は通常行いません。
時期や症状、便の色などからウイルスを推定したうえで、まとめて「ウイルス性胃腸炎」として治療することがほとんどです。
ノロウイルス感染症
ノロウイルス感染症は一年中発症しますが、ピークは冬です。
症状は嘔吐で始まることが多く、そのほかに下痢や発熱が見られます。
嘔吐は急に起こりますが、半日程度でおさまることが多いです。
熱は38℃ぐらいまで出ることもありますが、こちらも1日程度でおさまります。下痢は伴っても軽度のことが多いです。
ノロウイルスの感染経路は手や食べ物を介して口から感染する場合と、牡蠣などのウイルスを含んだ食品を食べたり、ノロウイルスの入った井戸水を飲むことで感染する場合があります。
さらに人が密集したところでは咳やくしゃみによる飛沫感染や嘔吐物を放置したことでウイルスが空気中を漂い、それを吸い込むことでも感染します。
潜伏期間は1-2日で、発症すると初日に最も強い症状を現しますが、その後だんだんとおさまって3日くらいで改善します。
ロタウイルス感染症
ロタウイルス感染症のピークは冬の終わりから春先です。
つまりノロウイルスのピークが終わるころからということになります。
症状は激しい下痢で米のとぎ汁のようと表現される白っぽい便が特徴的です。
下痢は3-8日程度続きます。そのほかに嘔吐や発熱も見られます。
ノロウイルスと比較して発熱は長く続きます。
ロタウイルスの感染経路は主として便の中のウイルスが手などを介して口から入る糞口感染です。
潜伏期間は1-3日で、症状が消失するまでには1-2週間かかります。
ノロウイルスとロタウイルスの相違点
ノロウイルス | ロタウイルス | |
---|---|---|
ピーク | 冬 | 冬の終わり~春先 |
主症状 | 嘔吐 | 下痢(米のとぎ汁様) |
発症期間 | 3日程度 | 1-2週間 |
後遺症 | ほぼない | まれに脳炎 |
ワクチン | ない | ある |
嘔吐・下痢の治療法
ノロウイルスやロタウイルスに対する抗ウイルス剤といった直接的な治療薬はありません。
入院しても治療法は脱水に対する点滴や発熱に対する解熱剤といった対症療法になります。
ただし、嘔吐や下痢はウイルスを早く体外に出すための体の反応であり、自己判断で吐き気止めや下痢止めを服用させるのはよくありません。
ご自宅での対応
脱水に注意
特に子どもで最も気をつける必要があるのは脱水です。
下痢も嘔吐も体の水分が失われる症状であり、適切に水分がとれない場合には水分補給のための点滴が必要になることもあります。
体に吸収されやすいのは経口補水液です。
一度にたくさん飲むと嘔吐を誘発しやすいので、飲めるときでも少量をこまめに摂るようにしましょう。
また飲みものは冷たすぎると胃腸を刺激するので、常温か温めたものにしましょう。
食事について
食事ができるようであれば、消化の良いおかゆやうどんなどにしましょう。
とくに小さい子どもの場合は、吐いたものがのどに詰まったり、肺に吸い込んでしまう可能性があるので、寝かせるときは横向きに寝かせましょう。
トイレについて
トイレで便をしたあと流すときには、蓋を開けたまま流すとウイルスが舞い上がる可能性があるので、蓋をしてから流すようにしましょう。
感染対策
ノロウイルスやロタウイルスが流行る時、多くは発症者の便や吐物に混じったウイルスが口に入ることによって感染し、ひろがっていきます。
嘔吐物や便は放置すると乾燥したときに、ホコリのようにウイルスが舞い上がり、それを吸い込むことで感染するので、処理の仕方が重要です。
基本的には直接触れないようにして、素早くウイルスを封じ込めることが重要です。
嘔吐物の処理について
嘔吐物を処理するときは、できれば使い捨ての手袋、エプロン、マスクを身に着け、嘔吐物には新聞紙やペーパータオルなどかぶせて全体を覆います。
その上から薄めた塩素系漂白剤を紙がしっかり湿る程度にかけます。
その後、紙ごと外側から内側に嘔吐物を寄せて、中に嘔吐物を閉じ込めたままビニール袋に入れます。
見た目ですべての嘔吐物が拭きとれていても、表面にはウイルスが残っているので、さらに薄めた塩素系漂白剤をつかってしっかりふき取ります。
部屋の換気もしっかりしましょう。
アルコール消毒が効きにくいタイプのウイルス
ノロウイルスもロタウイルスもアルコール消毒は効きにくいタイプのウイルスです。
しかも、乾いた場所でもこれらのウイルスは10日以上生存できます。
そのためこまめにふき取り消毒を行いましょう。
消毒は薄めた塩素系漂白剤を用いますが、金属に使用した場合は腐食してしまうので、最後にしっかり水拭きをしましょう。
また、薄めた塩素系漂白剤は作り置きできないので、余った分はすぐに廃棄しましょう。
手洗いについて
手洗いも重要ですが、石鹸でノロウイルス・ロタウイルスは死滅しません。
しかし石鹸で手洗いをすることは、ウイルスを浮き上がらせて水で流す効果があるので、石鹸による手洗いもしっかりしましょう。
予防接種について
それでもノロウイルスやロタウイルスはごく少量のウイルスが体内に入るだけで発症してしまうため、完全な予防は困難です。
とくにロタウイルスはほぼすべての子どもが1度はかかること、稀に脳炎などの合併症があることなどからワクチンによる予防も重要です。
通園や外出はいつから?
●ノロウイルスやロタウイルスは学校保健安全法で「その他の感染症」に分類されています。
「その他の感染症」とは、必要に応じて第三種感染症と同様に出校停止の措置が行なえるもので、発生状況などによって判断されます。
学校から特に指示がない場合、ノロウイルスやロタウイルスは必ず出席停止ということではありませんが、嘔吐や下痢がひどい間は自宅で休んだほうがよいでしょう。
嘔吐や下痢がおさまっても、ウイルスは便にしばらく混じるので、通園を再開したあとも手洗いや消毒は1カ月程度続けましょう。